Le CharmeYJ白雪の藤丸にはまって作ってしまったwebsiteです

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20th April, 2015
Short Story/
「Xmas day」 と「藤丸区長のある日のアフターワークの話」をpixivから転載&加筆
7th August, 2014
Short Story/
Fujimaru, the New Hachiohji Head of a ward, has stationed !/藤丸新八王子区長、着任!をup
1st August, 2014
Five Years After the Battle in Shinjuku 3-4をup
4th July, 2014 サイト開設



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白い、珍しく降り積もった東京の雪の中を細身の少年が赤いコートに身を包み、人を待っている。
その黒い髪は寒いのにきれいに纏めて上げられていて、手を包む厚く黒いグローブはそれでも寒さをこらえきれないらしく、時々少年は手をすりあわせる。
「ケン!」
待ち合わせ場所に来た金髪のサンタに手を挙げてその橇を止めると、藤丸は隣に乗り込んで後ろの積み荷を確認するのだった。

「サンタ・プロジェクト!?」
いつもの突拍子もない泉の思いつきに、尊と天城屋は眉を寄せ、白雪は嬉しそうに、茜と中ノ下は温かい笑顔を向けたのだった。
「黒女の圧政がなくなってから、夢のある東京を一度も俺らは見せられてないだろう。」
泉の意見に、それはそーだけど、と藤丸がケンに今の現実の都内のインフラ状態の内情を話し始め、宗一は茜に今年の医療費はどのくらいかかったか?と予算の確認をし始めた。
ごちゃごちゃとメンバーが今の内情を確認し合っている中で、尊が泉に確認する。
「兄キ、東京にいる子供に、クリスマス、見せたいってことでいいのか?」
尊が言葉がいつも足らない彼に、サポートの言葉を付け加える。
「まあ、白雪様も素敵なクリスマスを今度は迎えて欲しいですしね。」
天城屋の協力的な様子に、ぎーや!と白雪が飛びついてきて、その空間だけまた誰も入れない不思議な異次元になる。
「よーするに、東京の子供が今より幸せに感じるプレゼント、しよってのか?」
泉と尊と天城屋の言葉を大まかに自分流に翻訳して、藤丸が言い返してきた。
「ああ、、、まぁ・・・」
プレゼント、と言った時点で泉の視線が東京都の予算を握っている一人の宗一に目が行く。
「別に、予算なら若干余ってるぞ。」
いつものクールな三白眼で宗一が返してきて、にいちゃん!と宗二が嬉しそうな声を上げる。
「なら、24日に配れるように計画しようか。」
泉元隊長が集まったメンバーを纏め、広く狭い東京都の配達区分けを始めたのだった。

「でもさ、ケン。今の子ってこんなのもらって嬉しいのか?」
K・Kの橇のプレゼントの袋の中からトナカイの木のオブジェを取り出して藤丸が言った。
「うーん、それは、親用かな?」
ん?と不思議そうな顔をした藤丸にK・Kが言葉を付け加える。
「俺の国では、クリスマスは国民的な祝日なんだ。だから、子供が喜ぶプレゼントもするんだけど、親は今の東京じゃもらえないだろ?」
そだな、とケンの言葉に納得した顔をした後、はっと藤丸が気づいた表情をした。
「ケン、」
サンタクロースの格好をしたK・Kに藤丸の腕が絡み付く。
「こら、藤丸。前見えないだろ!」
少し橇がバランスを失った反動で、藤丸の唇がK・Kの頬に触れる。
「Happy Christmas, Ken.」
すぐに身体を離した様子に、K・Kが藤丸を抱き寄せる。
「I wish your merry Xmas, Fujimaru.」
その細い、寒そうな様子を暖めるように抱きしめた。
「オレ、ケンがいたから寂しかったクリスマスなんてないぜ。」
その温かい腕から抜け出て、藤丸が橇の手綱を取る。
「今晩中に、全ての東京の子供達にHappy merry Xmasを、だろ?」
K・Kの表情を確かめるように、藤丸が手綱を引いた。
「ああ、お前も含めてな。」
と、藤丸の頭を抱き寄せる。
「それはサンタの仕事が終わってからな!」
えいっ!とムチをしならせて、K・Kの橇は更に先に進むのだった。

「おい、尊手綱貸せ。」
「やだよ、これ面白いし。」
計画の言い出しっぺの泉が偶然元都庁倉庫から、いつ使ったのか大型の橇を見つけた時に尊の目が輝き、その時から泉の手に橇の手綱はずっと渡されていない。
「道は長いんだからずっと手綱を持ってると疲れるぞ。」
その昔の尊に言い聞かせるような兄キっぽい言葉に、尊はしぶしぶ手綱を渡した。
「尊、俺たちのサンタになる場所はどこだ?」
「んーと、立川八王子、渋谷杉並中野豊島北板橋、新宿港千代田中央文京、台東墨田江東江戸川葛飾足立荒川、以外!」
「なんだそりゃ?」
と最初は確認するように聞いていた泉が、途中から聞き流し始め最後に眉を寄せて、尊を上からじろっと見た。
「まず世田谷から行こうぜ,兄キ!」
なるほど、と手綱を握った泉に、全速力!と尊が橇の御者台から立ち、世田谷の方向を指してかけ声をかける。
ピシっとムチが鳴って、橇を引くトナカイの速度が上がった。
「オレたちの家、どーなってるかな?」
ゴトゴト揺れる橇の上で、尊が泉に懐かしそうに言う。
「きっと跡形もないさ。・・・・・・ぼろかったからな、あのアパート。」
へへっ、そだな、と尊が答えて、二人の橇は小雪の中東京の西へ向かった。

「?どうなさいました?白雪様。」
文京地区の住民の家にプレゼントを届けた白雪がその扉の前から動かないのに、天城屋は心配して橇を近くの樹木に固定して駆け寄った。
「あのね、、、、しらゆき、サンタなのにプレゼントもらっちゃったの。」
白雪の手には橇に載ったプレゼントとは別のお菓子の詰め合わせが握られている。
新宿近辺の住民は比較的裕福な者が多いため、きっと小さい白雪がサンタをしているのが微笑ましく、お返しをくれたのだろうと天城屋は推測した。
「サンタはプレゼントあげる人なのに、いーのかな。」
「そもそも、クリスマスはキリストの生誕を祝う行事ですからね。」
と、天城屋は少し考えるように顎に手をあててから、にっこり笑って白雪に笑顔を向けた。
「イエス・キリストの子供は全て祝福されるんです。だから、白雪様がそこに入ってない訳ないじゃありませんか。」
それは、白雪様への祝福のプレゼントでございますよ、という天城屋に嬉しそうな笑顔を向けて白雪はたたた、と橇に走って行った。
「ぎーや!トナカイさんもしゅくふくされたいよね!」
がさがさと自分がもらったお菓子を開けようとしている様子に、白雪様!トナカイはチョコとかは身体に悪いかもしれませんよ!と急いで止めようと駆け寄る。
ーしかし、ケネス元区長も米軍にトナカイをご注文とは、びっくりですよね・・・
泉が大型橇を見つけた後に、藤丸がでも、これ引いてくれるのいないじゃん、と突っ込んだ瞬間にK・Kが携帯を取り出していた。
「オヤジ、トナカイ20頭、至急。」
パチン、と携帯を閉じた後に
「これで使えるだろ。」
と言ったK・Kにあっけにとられた顔を見せる藤丸と、トナカイさ〜ん、とはしゃぐ白雪と珠、宗二の面々。
ーまったく、米軍の力、恐るべしですよ。
やっと白雪に追いついた天城屋が、トナカイの主食は草なんですから、草っぽいのあげないとトナカイさんお腹壊しますよ・・・と言った瞬間、
「オ、、、オレは子供では!」
と近くで声がした。
「遠慮しないで受け取りなさい。Happy Xmas!」
押し付けられるように、お菓子の袋を渡されてあっけにとられている宗一が、天城屋と白雪の目に入る。
困ったような顔をしている宗一に、
「ぎーや、そーいちもしゅくふくされてるー。」
と白雪が話しかける。
「あー、ちょうどアンタ達もこの辺配ってたんですか。ま、人の好意は受け取っとくもんですよ。」
と、天城屋は橇に戻り、宗二があ!白雪ちゃん!と駆け寄ってくる。
また、あとでねー!と白雪が言って、 粉雪の中天城屋の元に彼女は駆け寄って行くと、ピシッとムチの音が橇からして天城屋と白雪のサンタはそこから去って行った。
「宗二、Happy Xmas.お前にだ。」
手の中にあったお菓子の袋詰めをがさっと渡して、にぃちゃん、どうしたのこれ?と宗二が嬉しそうに聞いてくる。
「祝福の印、だそうだ。」
「???」
訳のわからない言葉に、宗一は直ぐ橇に乗って、宗二行くぞ、と声をかける。
ーそうだ、こんなになっても宗二と二人で生きていられるのは、祝福されているのかもな。
自分が生きるためとはいえ、今までどれだけの人をこの手に殺めてきたのかと思うと、キリストの祝福もぞくっと背筋が凍る。
ーこの矛盾を抱えながら、宗二と二人で生きていくというのが神の祝福だというのなら・・・
橇に乗った宗二を確認して、手綱を引いて次の場所へトナカイの鼻を向ける。
ーそれも悪くない。
少し雪が多くなってきた東京の夜を兄弟の橇は駆け抜けて行った。

「ところで、珠殿はどうされたのですかな?」
杉並渋谷を中心とした地区でサンタをしている茜に、中ノ下が話しかけた。
「んー、渋谷と練馬にプレゼント渡しに行くって言ってた。」
「お一人で?渋谷はともかく・・・」
「うん、そだよね。中ノ下さんならそー思うよね。」
と、茜はトナカイの鼻の先を練馬に向けた。
「それとも珠ちゃん呼ぶ?中ノ下さん一人くらいなら持ってけそうだし。」
珠に聞こえる指笛を吹く前に茜が確認する。
「でも、そうしたら茜殿はお一人になってしまいますぞ?」
練馬で亡くなった人々に贖罪を一番感じているのは中ノ下と泉に違いない。
ーきっと元隊長殿は既に何度も挨拶されているでしょうしね。
「僕は、杉並の人たちは良く知ってるから、挨拶代わりに回ってくるよ。1時間ぐらいで合流で大丈夫かなぁ?」
「はい、お願い致します。」
冬の空気を切り裂く音が聞こえて、しばらくするとバサッと翼竜の翼の音が聞こえてくる。
「どーした?茜。渋谷は終わったぞ。」
翼を畳みながら着地した珠に茜が言う。
「練馬には中ノ下さんも行きたいって。連れて行ってくれる?」
「お手数かけてすみませんなぁ、珠殿。」
サンタのコスプレをしている中ノ下を見て、珠がにこっとする。
「中ノ下が一番サンタっぽい。きっと練馬の住民喜ぶ。」
ばさっと翼を羽ばたかせ、中ノ下を掴んだ珠が雪空に舞う。
「たまちゃーん、1時間後ぐらいに合流するからねー!」
了解した、という合図のようにバサバサと羽を羽ばたかせた珠を後に、茜は橇の向きを杉並に戻す。
ーめぐみちゃん、元気にしてるかなー
まさかこんな大きいサンタが来るなんて、誰も予想してないよね、と笑って1時間1時間!と橇を急がせて古い友人に茜は会いに行くのだった。

「兄キ、これ、何?」
「さぁな。」
試しに世田谷の自宅(跡?)を訪ねてみた兄弟は、その場所でイブの宴会をしている元アパートの住民達に出会った。
「お!?赤銅兄弟!どこ行ってたんだ?最近全然見かけなかったぜ?」
2年強ぶりの再会に全く躊躇せずに宴会の席に招かれて、泉はナチュラルに橇からおりて彼の日本酒を受け取る。
「おい!兄キ!仕事はよ!」
ぐいっと一口飲んだ後に、何も考えていない様子で尊こっち来い、と泉が手招きする。
もう!と橇を降りた尊に、住人その2が絡んだ。
「心配したんだぜ?尊ちゃんよぉ。泉にぃちゃんの大会に行ったまま消息不明で。」
そのオヤジの奥さんと思われる女性が、絡まない!と尊の側からオヤジを引き離した。
「でも、良かったねぇ尊ちゃん。お兄さんも無事に見つかって、一緒にここに戻って来られて。」
無事で・・・この右手で?と一瞬頭に疑問が駆け巡る。
白雪を100年生かしたグリム・ロックオリジナル、それが今自分の右手に潜んでいるのだ。
「うん、良かった。無事にここに、元気で帰れて、おばちゃんに会えて。」
と尊が言う。
3杯めの日本酒を飲み終わった泉が口を開いた。
「尊、仕事に返るぞ!」
がさっと大きい身体を起こして、トナカイが待つ橇に揚々と帰って行く。
「うん!」
と尊はその後を、昔の世田谷に住んでいたときのように追う。
「ま、お兄さんがサンタの服着てるのも吃驚したけどねぇ・・・」
おばちゃんの感想を後に、尊が橇に戻るのに、仕事終わったらまた、おいでねぇ!と声が聞こえてくる。
「うん、オレ今都庁の仕事してんだ。何かあったら連絡してよ!」
泉の手綱に導かれて、兄弟は雪の中、やっと世田谷地区の子供達にクリスマスの祝福を届けに行くのだった。

「ほら、おめーによ。プレゼント。」
立川の在日米軍用住居の端っこにある家の子供に、橇にあったプレゼントを手渡して藤丸はにこっと笑った。
「んーー、、、あっ!」
藤丸の笑顔を通り越して、その子供は金髪のK・Kの所に嬉しそうに翔て行く。
「おい、これで何回めかよ。ケンの方が好かれるの。」
その子供を抱き上げて、K・Kがあやしてやるのを、その家の親も出てきて嬉しそうに見守る。
「ま、お前は伝統的なサンタには見えないからな。」
子供を家に戻して、K・Kは藤丸と一緒に橇に戻った。
もうプレゼントがない、空の橇を都庁の方に向けると、遠くからミサのコーラスが聞こえてきた。
「もう、、12時過ぎか。Christmasだな、今日はもう。」
とK・Kが言う。
Sanctus, sanctus, sanctus
Dominus Deus Sabaoth,
Pleni sunt coeli et terra gloria eius.
藤丸が歌の聞こえる方にポニテを揺らして顔を向けたのに、
「聴いてくか?」
と声をかける。
「うん。」
と答えたのに、K・Kは橇を粉雪の中新宿から返して米軍基地内の教会へ走らせる。
Osanna in excelsis.
Benedictus qui venit in nomine Domini.
Osanna in excelsis.
Agnus Dei qui tollis peccata mundi, miserere nobis.
Dona nobis pacem.
軽い橇はクリスマスの夜を捕らえるように、急いで教会へ向かったのだった。





*上記のSanctus とOsannaは下記のBach ロ短調ミサ曲 BWV232 日本語歌詞サイトより引用致しました。
http://www.ab.auone-net.jp/~bach/bwv232.htm


〜Interval〜

「あっ、来たんだ。トナカイ。」
いつもの貨物発着場にケンに会いに来た藤丸の目に、大木の枝のように大きな角をしょったトナカイが何頭も空母から降りてくるのが入ってきた。
「近くに行ってみるか?」
「ガキじゃねぇんだから。」
「藤丸だって、初めてだろ。トナカイ見るの。」
いいって、という藤丸を強引に引っ張ってケンは20頭のトナカイが林立している輸送用トラックの近くに連れてくる。
「ひゃっ、でけぇ・・・」
目の前にそびえ立つトナカイに一瞬気後れした藤丸だったが、ケンにとん、と背中を押されてその胸毛に顔が埋まる。
「うわっ!」
もふっとその硬い白毛に顔を埋めて、倒れないようにそのトナカイにすがりついた。
目をあげると黒目がちの隅蹄目シカ科の瞳に上から見つめられ、思わずまた白い胸毛に顔を埋める。
くしゅん、と毛の感触にくしゃみをしてから、へへっとその白毛に頬ずりした。
「以外と硬くても、気持ちいいだろそれ。」
トナカイから離れない藤丸に、ケンが声をかける。
うん、と少し頬が赤くなって頷いたように見える藤丸に、ケンは優しい笑顔を向けるのだった。