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7th August, 2014Short Story/
Fujimaru, the New Hachiohji Head of a ward, has stationed !/藤丸新八王子区長、着任!をup
1st August, 2014
Five Years After the Battle in Shinjuku 3-4をup
4th July, 2014 サイト開設
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世界有数のメトロポリス、東京ーーーー
その行政を維持する東京都庁には日夜様々な事案や問題が途切れなく持ち込まれ、 それらを解決する為の対策、対案、施策が毎日のように生み出されている。
その記録は都庁内のデータベースには全て入れる事は不可能で、 提出された資料は全て受領した時点の紙ベースで一定期間都庁の地下倉庫へ厳重保管され、 その後廃棄される手順だった。
そのルールは案件の軽重に係らず例外なく適用され、全ての文書は一端、 地下倉庫へ送られるのであった・・・・・・。
「よしっ。開いたぜ!ケン!」
尊が火山の右手でやっと溶かした元東京都庁の地下倉庫の扉が、ギィときしんで、 人が入れるぐらいに開いた。
「尊くん、すまないな。右手を使わせて。」
「いいって。オレケンと違って全然元気だし。」
東京が復興して人口が徐々に増えて来ると、生活必要物資はだんだん 米国からの援助と自助努力でまかなう事が難しくなり、都庁に何か保管庫があったな、 という赤銅泉の思いつきでK・Kと尊が元都庁地下にやってきたのだった。
「しかし、ここは外れだな。」
一歩中に入り、暗い倉庫内を懐中電灯で照らすと、中には書類のファイルが整然とラックに収まっている。
「非常食料か、医療機器、薬やインフラメンテが可能な機械か工具があれば良かったのだが・・・。」
大分広い倉庫で、小さい懐中電灯の灯りでは壁の向こう側まで照らす事はできずに、 その光は向こうの闇に消えて行った。
「そっかー。じゃあ、別の所探そうぜ?」
と尊が地下倉庫から出ようとした時に、
ー八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)
というファイル一式がどさっと尊の足下に落ちてきた。
ー八王子って藤丸のいたとこじゃん。
そのファイルセットをもちあげると、携帯用のゲームメディアとハードウェアのような物がばらばらっと落ちて来る。
「お、ゲーム。」
昔の娯楽の記憶が抜けない尊はすぐに手に取って、やってみたくなってきた。
「ケン、これ持って帰っても大丈夫だよな!」
小型の光ディスクメディアとそのハードウェアを尊が取り上げる。
「尊くん、何か見つかったのか?」
尊の言葉にK・Kはつかつかとその中身を確認しようと近づいて来る。
「中は分かんないけど、ちょっとやってみたくって。」
正直に尊が差し出すゲームのセットにK・Kは笑顔を向けた。
「問題ないんじゃないか?でも、一応俺も1セット持っておこうか。」
尊くんが何か言われないようにな、とそのファイルにセットしてあったソフトとハードの別の一式をファイルごと持ち上げる。
「ありがとう。ケンって本当にいいヤツだよな。」
藤丸が懐くわけが分かるよ、と言う尊に、K・Kは次の所に行こうか、 と倉庫を後にしてその荷物を脇に都庁跡を更に探索するのだった。
家に帰ってきて、泉が用意した夕食を平らげた後、俺はもう寝るからな、と寝室に行った泉を残して 尊は充電が終わって今日拾ったゲームのハードを起動した。
「懐っつかしーなー。昔良くやったよー。」
東京が隕石で孤立する前、高校生だった尊はご多分に漏れず、普通の高校生男子が好きな ゲームに興じる学生だったわけだ。
「これ恋愛シュミレーションかな。」
画面にあなたの性別は?と選択肢が出てきて、おとこ、っと入力する。
ーへぇ、、ときメモみたいなやつかなー
学校の場面が出てきて、伝説のスズカケの木の下で告白をもらえると・・・と画面が進んで行く。
さくさく最初のナレーションを飛ばして行って、本編に入った時に
「ブッ!!!」
と尊は勢いよく吹いてしまったのだった。(笑)
今日は大した成果がなく帰ってきたK・Kだったが、休む前に尊が興味を持った資料を取りあえず見てみようと ファイルを手に取った。
「八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)」
ー聞いた事はないが・・・・・・
ファイルを開き、その1ページ目のお題目に目を通したが、いまいち興味が持てずにゲーム機の方を見る。
ー尊くんはもうやっているのかな?
時間を見たらまだ11時前だったので、画面ぐらい見ておくか、とメディアを入れて起動した。
「これは・・・・(笑)」
くくっと笑って、ファイルを見直し、後ろの方にあるゲームのマニュアルに目を通す。
ーいやー、藤丸怒るだろうな・・・。
尊に連絡を取ろうかと思ったが、時間が遅いので明日でかまわないだろうとゲームの画面に戻る。
ーしかし、、、日本のゲームっていうのは良くできてるな・・・・・・。
苦笑が止まらず、苦笑いしながらもどんどんK・Kは画面を進めて行く。
思わず夜が更けるまで、年甲斐もなくシュミレーションゲームにはまってしまった K・K なのだった。
「おーい、ケン。今日休みだったか?」
昼過ぎに何時もの貨物発着場で見つからなかったので、藤丸は空いた時間にK・Kの自宅に声をかけにきた。
「Ciao、藤丸。今日はオフにしたんだ。」
めずらしいな、と何時ものように家に上がり込んだ藤丸は、居間であぐらをかき 何か集中して小さい画面を見ているK・Kに近づいて来た。
「藤丸、お前犬派か?猫派か?」
「・・・どっちでもないな。」
そうか、とその小さい画面に戻るK・Kに、お前何やってんだ?とそれを覗き込もうとする。
「いやいや。」
とK・Kは覗き込まれないように、藤丸に背を向けた。
「何だよ。」
ともう一度その画面を見ようと藤丸はK・Kの正面に回り込む。
「いや、これはお前見ない方がいいって。」
もう一度背を向けられて、
「ケン、何だよ。18禁か何かなのか?」
まわりに言わなきゃいいだろ、見せろよ、とK・Kの手から携帯ゲーム機をさくっと奪う。
「あっ!藤丸!」
ーまったく・・・ケンがゲームにはまるなんて珍しいな。
と画面を見ると
『今日のデート楽しみにしてたんだぜ。危ないからちゃんとメットかぶれよ。』
と画面から音声が聞こえて来る。
バイクの音と、バックグラウンドミュージックが鳴って、
『今日は楽しかったぜ。お前だから特別にオレのバイクに乗せてやったんだぞ。 他の奴に言うなよ!オレとお前の秘密だぞ!』
と続きの画面に移っていた。
「おい、、、、ケン、これはどーゆー事なんだ?」
画面の笑顔の藤丸と、それとは似ても似つかない、眉間に深くしわが寄ったいつもの藤丸がダブルでK・Kの目の前に現れた。
ーあちゃー、ばれたか・・・・。
とK・Kはせっかくのオフが台無しになりそうな予感がするのだった。
「ハッピーくん、いるー?」
一方赤銅家には珍しく回診ついでに茜が立ち寄って来ていた。
その呼びかけに誰の答えもなく、赤銅家はしん、としている。
「ハッピーくん最近来ないから、白雪(ちび)ちゃんが寂しがってるよー!」
人けが無いように見えたので、仕事かなー、と立ち去ろうとすると、
「あ!茜ちゃん!待った!すんげーいーとこに来た!」
と奥からバタバタバタッと尊が転がり出てきた。
「ハッピーくんまだパジャマー?どしたの?」
玄関まで勢い良く転がってきた尊に、何が起こったのかと茜は尊を見た。
「茜ちゃん、時間ある?もう朝からちょー誰かに話したい事あってさー。」
尊が笑いを抑えきれない様子で、茜の手を引っ張る。
「面白いことー?」
という茜に、うんうん、と答えて、上がって、と尊は自分の部屋にすぐ入れると、
「これ。」
と昨日入手した携帯ゲーム機を茜に差し出した。
その画面に映っているのは、
「あれー?これ髪下ろしたデコちゃんじゃん。」
と茜がびっくりして画面を凝視した。
「そう!、そうなんだよ!しかも性格が全然違うんだよ!」
見てみ、と尊が画面を操作する。
『尊、ケーキ焼いたんだ。一緒に食べる?』
「デコちゃんがケーキ・・・・」
と絶句する茜に、
「ここでYESを選ぶだろ。」
と尊が画面を進める。
『嬉しい!美味しくなるように頑張ったんだ!食べよ!』
と満面の笑みが画面いっぱいに広がる。
「これ、デコちゃんじゃないよ・・・・。」
と茜が至極まともなコメントをする。
「そう!そうなんだよ!でも顔は藤丸なんだよなぁ・・・。」
『おいしかった?』
と画面が進んで、藤丸なのに、藤丸じゃない笑顔のキャラが画面に現れる。
「・・・・・・・・・」
あまりの本人との乖離の激しさに、目を見合わせる茜と尊。
「でもこれやってたらさー、本物に関係なく可愛くなっちゃってさー、」
と画面を進める尊。
「うん、ホント似てるよねー。ってデコちゃんもこんな笑顔できるんじゃないかって思っちゃうよね。」
ぴくん、と尊が茜を見る。
「そう!それだよ!この十何万分の一でも藤丸ができたら絶対これから楽になるって!」
ちょっとオレ藤丸のとこ行って来るー!
と尊がパジャマに上着をひっかけたまま飛び出して行った。
ーでも・・・きっとデコちゃん激怒するよー、そんな事言ったら・・・。
でも面白そうだから僕も行っちゃおー、と次の回診の時間を確認しながら、
茜は尊の行き先を追うのであった。
「で、ケン。これどこにあったんだ?」
K・Kの顔にゲーム機を突きつけ、襟首を締め上げて、藤丸は最近ぱったり見られなかった、 八王子区長時代のオレ様横暴キャラで、K・Kを問いつめていた。
「ま、落ち着け藤丸。な?」
と、K・Kからあらいざらい事情を白状させようとしている藤丸の所に、ちょうど尊が転がり来んできた。
「ふ、、藤丸!オレお前に言いたい事があって!!」
「あん?今オレは急がしーんだよ。後にしろ。」
全速力の割にはパジャマだったので、直ぐ後ろに茜が追いついて来る。
「藤丸!お前は笑ってる方が絶対可愛いって!」
「はぁ!?」
藤丸の眉が更に0.3mm上がり、思わずK・Kを締め上げている手を藤丸は離して、尊に掴み掛かろうとした。
「ほら、これ。」
げほっげほっ、と締め上げられていた襟から解放されて咳き込んだK・Kをよそに、 藤丸は尊から渡されたゲームの画面を見る。
『ケンがOKなら尊、いつでもお前と一緒にいれるのにな。』
画面の藤丸はポニテを解いて少し胸元を緩めた服装で、笑顔で見つめている。
あり得ないストレートな尊への好意のセリフが、自分と同じ顔の口からで出てきたのを聞いて、 藤丸は凍りついた。
そんな藤丸をよそに、尊はK・Kを介抱(?)する。
「尊くん、結局やってみたのか?」
瀕死(笑)のK・Kは自分の後ろで固まっている藤丸をちらっと見て、尊に聞いてみた。
「うん、かなり。でもさぁ。」
と不満そうに尊が言う。
「こう、、、何かボリュームが藤丸には足りないんだよなー。」
尊の答えに思い当たる節があり、くくっとK・Kは苦笑する。
「尊くん、女編やったんだろ。」
「うん、顔は藤丸なんだけど、身体がなんかつるぺたで・・・」
と言う尊にぴくっとリアル藤丸が反応した。
「それはわざとだ。尊くん、この資料を見てみろ。」
とK・Kは脇にあったゲームパッケージとセットのファイルをばさっと開け、ある議事録を尊に指し示した。
「うん?第2回八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)推進会議、 出席者 黒雪都知事、中ノ下近衛、ゲーム会社コ○ミ・・・・・・・・」
そこには熱く、今回のゲームコンテンツの目的をを語った上に、 現在区民への評判がいまいちの八王子区長の近親感アップを目指すため、 人物ビジュアルは本人を想起させる方がうんたらかんたら・・・という異次元の会話が書き付けられていた。
「ケン、全部これ読んだのか?」と尊が聞く。
いや、よくは・・・、とK・Kが首を振った時、ぽん、と藤丸はK・Kの肩に手をかけた。
「ケン、オレとお前の間で隠し事はねぇよな?」
切れ気味の表情で、二人の答えを待たずにガサッと藤丸は資料を横取りした。
ーどこのどいつがこんなの作りやがったのか、ぶっ殺す!
頭に血が上って、がさがさと乱暴に資料を繰る藤丸。
と、その時に、ひゅん、と見覚えのあるムチが飛んできて,藤丸の手から資料を奪っていった。
「なっ!だれだ!」
「これは、懐かしい話題が聞こえてきたと思ったら。皆様ごきげんよろしゅう。」
黒雪消滅から完全復活した天城屋の手に、藤丸が持っていた資料が移動していた。
「てめぇ、これについて何か知ってるな?」
すっかりぶち切れた藤丸が天城屋に噛み付く。
「ええ、これは旧都庁の汚点とも言えるプロジェクトでしたが、故黒雪都知事が乗り気でねぇ。。。。」
ちらっと藤丸に視線を流して、天城屋は言葉を続けた。
「まあ、まだ乳臭さの抜けないアンタが一人前みたいに区長なって、そのフォローを私たちがするのはいいんですよ。 ただ、この天城屋が許せないのは!」
天城屋があのゲームの画面をフォン、と映し出す。
そこでは、何かサブイベントで白雪が主人公に助けられたようで、
『ぎーや!ありがとう!大好きなのー!』
と白雪がどアップで映る。
そのすぐ後に、
『ぎーや。オレの白雪を守ってくれてサンキューな。バチ☆』
と画面の藤丸が、
「藤丸がウィンクしてる!」
「ウィンクしてたな。」
「ウィンクしたねー。」
「そうです!!!私の純粋で美しくも可愛らしく気高い白雪様を『オレのもの』呼ばわりは許せなくて、 何度制作側と故黒雪都知事に掛け合った事か・・・・・・」
背景の三人のコメントを丸無視して、苦悩の様子を見せながらはぁ・・・・と眼鏡のブリッジに指を添え、 頭を振ったた天城屋。
ー毛玉さんて、話すとこんなうざいんだー・・・
天城屋語初心者の茜以外は、皆また始まった、と深いため息をついた。
「しかし、このプロジェクトのおかげであたしゃぁ、私の白雪様を自宅までお持ち帰りできる上に、 日夜愛でられてですねぇ・・・まぁ・・・そのぐらいは許せる気になってきたんでございますよ。」
場所はK・Kの自宅の玄関前なのに、白雪様語りに陶酔している天城屋はまるで見えないバックダンサーをしょって 演技している役者のように朗々と語っていた。
「だーかーらー、よーするに全部オレのおかげだったんだろ。」
話の腰をさっくり折る藤丸。
「いえ、本題はここからです!!!!」
ピシっと藤丸の前にまた画面を示す。
『ぎーや、オレ、お前が白雪にいろいろしてくれて、・・・』
画面の中は桜の花びらが舞って、伝説のスズカケの木の下にいる藤丸という設定のようだった。
『最初はオレの白雪に親切にしたいだけだと思ってたんだ。』
ー100%そうだろう!!
その場の全員がその言葉を信じた。
『でも、白雪が絶対違う、自分に優しくしてくれるけど、いっつもオレの事色々聞いてくるからって・・・』
画面の中の藤丸が悩ましげな表情になって、頬を染めた。
それを見てなぜか照れるK・K、尊とあっけにとられる茜。
『だから、そう思ってお前と接してるとだんだん気になってきて・・・。ぎーや、オレの気持ちは迷惑か?』
「アンタのねー、その気持ちは迷惑なんですよ。」
ー藤丸のじゃないだろう。。。。
とのK・Kの突っ込みは当然天城屋には届かなかった。
「どうすれば、白雪様とのエンディングを迎えられるのかと何百回やった事か・・・」
ーゲ、ゲーム的には藤丸のがハッピーエンディングなんじゃないか?
何百回・・・そのしつこさに尊が絶句する。
「でももしかしたらこの資料にあるかもしれませんねー。私と白雪様のハッピーエンディングが」
とすりすりと資料に頬擦りして一人ごつ天城屋に、つかつかと藤丸が近づいてきた。
「天城屋、そりゃー悪かったよな。」
ぐいっと天城屋のゲーム機と資料を持つ手を掴んで、
「ケン、銃。」
と切れ顔のまま左手をK・Kに差し向ける。
「いや、さすがに藤丸それは・・・」
「ふーん、そーかっよっ!!!」
天城屋を両手で掴み、ぐいっと思いっきり引っ張って、自慢の広いおでこを,ガンッ、と藤丸は天城屋の額に打ち付けた。
あまりの不意打ち攻撃にどさっとひっくり返る天城屋。
「安心しろ。金輪際二度と、リアルでも二次元でもお前によろしくはしねーから。」
ひっくり返った天城屋を見下ろして、しっかり天城屋のゲーム機とファイルを取り返した藤丸は、いてー、と額をさすりながら、 くるっとK・Kと尊の所に帰って来る。
そして、バサバサバサッとゲーム機3セットとファイルを尊の目の前に置いた。
「赤銅、燃せ。」
「えー、でもオレまだ全部クリアしてな・・・・」
ガサッとゲーム機を踏みつけて、藤丸はにっこり笑った。
「もう十分だろ。本物の藤丸様が笑っているうちにやれよ。」
「は、、、はい。。。」
グリムロックオリジナルの力をまた下らない仕事に使うはめになった尊。
「あと、それ拾った所に行って全部消し炭にするからな。」
嘘くさかった笑顔は直ぐ消えて、じろりとK・Kと尊を藤丸は睨んだ。
「いや、藤丸でもこれから元都庁に行くと結構遅くなるぞ。今度時間のある時に・・・」
「ふーん、遠ければオレのバイクに特・別・に、乗せて行ってやる。それ燃したら直ぐ行くぞ。」
激怒している藤丸に見えないように、K・Kと尊は苦笑いをして目を見合わせた。
「あっ、そうだ!僕もう回診にいかなきゃ。ハッピーくんじゃ、気をつけてねー。」
と茜が声をかけた。
「ありがとうな!茜ちゃん。」
「おい茜、このこと言いふらすんじゃねぇぞ。」
その場を離れる前に藤丸が釘を刺す。
「りょうかーい。デコちゃんもがんばってねー。」
ナニをだよ!!と噛み付く藤丸にバイバーイと笑いながら手を振る茜。
結局K・Kと尊は今日も旧都庁に通うはめになり、散々なオフ日になったのだった。
「ああ、そのプロジェクトならあの黒女が一番熱心だったな。」
↑の出来事から1週間程たって、公共交通の車両メンテでたまたま一緒になった泉と藤丸は 昔の話を始めたのだった。
「俺たち近衛はどうでも良かったんだが、未来ある有望な若者へのサポートは先達の義務であるとか何だか言って、 予算突っ込んでたからゲーム会社が悪のりしたのかもな。」
「んっとにあのババァ余計な事しかしねぇな!(怒)」
怒りながら、運転席の定期点検項目が全部終わったか藤丸が画面でチェックする。
「たしか区民全員楽しめるように男女選べる方がいいとか、細かい事を・・・」
「げっ!まさか一般に配ってねぇよな!」
藤丸はぎくっとして、泉の方を向いた。
「安心しろ。そうなる前にプロジェクト自体たち消えたはずだ。」
危ねぇ・・と泉の言葉を聞いて安堵のため息をつく。
ーそういえば、あの後中ノ下がまた何か反省していたな・・・。
よし、そっちは終わったか?と泉に聞かれて、完了、と手を振った。
「そーだ。あの能天気に、いい加減二次元のオレを記憶から消せって言っといてくれよ。」
帰宅しながら藤丸が泉に話しかけた。
「?」
「何かある度にゲームでは素直だったとか、まったくケンまで一緒になって、オレに何を求めてるんだか・・・」
モノ本相手にあいつらめ、、と毒づく藤丸に、
「ははっ・・・そりゃ災難だな。」
と泉は答えた。
日は少しずつ西に傾いてきて、きれいな夕焼けの空と、通り沿いにある人家からは夕食の準備と思われる、
美味しそうな料理の臭いがしてくる。
赤銅家に着き、じゃ、と藤丸に挨拶して泉が玄関を開けようとした時に、
「あ!兄キおかえりー!」
と尊が転がり出てきて、ガラッと玄関を開けてきた。
「兄キ!オレ藤丸のゲームの兄キのセーブデータ見つけちゃってさ!」
ーげっ!
一瞬冷や汗が泉の額を流れたが、おかまいなく尊はデータを呼び出す。
「これ!何か藤丸がシャワー浴びた後に、ポニテのゴムが見つからないから一緒に探してってイベント! どうやって出すんだ!?」
「て、てめぇら兄弟そろって・・・・・・(怒)」
「げっ!藤丸!!」
泉の後ろに隠れていた藤丸を見つけて、尊が後ずさる。
ー・・・・・・まずった・・・尊の行動はいつも予想以上だった・・・
と頭を抱える泉をよそに、それ燃せ!今オレの目の前で!と激怒する藤丸が再び現れ、 平和な東京の今日も無事に日が暮れて行くのでした。
その行政を維持する東京都庁には日夜様々な事案や問題が途切れなく持ち込まれ、 それらを解決する為の対策、対案、施策が毎日のように生み出されている。
その記録は都庁内のデータベースには全て入れる事は不可能で、 提出された資料は全て受領した時点の紙ベースで一定期間都庁の地下倉庫へ厳重保管され、 その後廃棄される手順だった。
そのルールは案件の軽重に係らず例外なく適用され、全ての文書は一端、 地下倉庫へ送られるのであった・・・・・・。
「よしっ。開いたぜ!ケン!」
尊が火山の右手でやっと溶かした元東京都庁の地下倉庫の扉が、ギィときしんで、 人が入れるぐらいに開いた。
「尊くん、すまないな。右手を使わせて。」
「いいって。オレケンと違って全然元気だし。」
東京が復興して人口が徐々に増えて来ると、生活必要物資はだんだん 米国からの援助と自助努力でまかなう事が難しくなり、都庁に何か保管庫があったな、 という赤銅泉の思いつきでK・Kと尊が元都庁地下にやってきたのだった。
「しかし、ここは外れだな。」
一歩中に入り、暗い倉庫内を懐中電灯で照らすと、中には書類のファイルが整然とラックに収まっている。
「非常食料か、医療機器、薬やインフラメンテが可能な機械か工具があれば良かったのだが・・・。」
大分広い倉庫で、小さい懐中電灯の灯りでは壁の向こう側まで照らす事はできずに、 その光は向こうの闇に消えて行った。
「そっかー。じゃあ、別の所探そうぜ?」
と尊が地下倉庫から出ようとした時に、
ー八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)
というファイル一式がどさっと尊の足下に落ちてきた。
ー八王子って藤丸のいたとこじゃん。
そのファイルセットをもちあげると、携帯用のゲームメディアとハードウェアのような物がばらばらっと落ちて来る。
「お、ゲーム。」
昔の娯楽の記憶が抜けない尊はすぐに手に取って、やってみたくなってきた。
「ケン、これ持って帰っても大丈夫だよな!」
小型の光ディスクメディアとそのハードウェアを尊が取り上げる。
「尊くん、何か見つかったのか?」
尊の言葉にK・Kはつかつかとその中身を確認しようと近づいて来る。
「中は分かんないけど、ちょっとやってみたくって。」
正直に尊が差し出すゲームのセットにK・Kは笑顔を向けた。
「問題ないんじゃないか?でも、一応俺も1セット持っておこうか。」
尊くんが何か言われないようにな、とそのファイルにセットしてあったソフトとハードの別の一式をファイルごと持ち上げる。
「ありがとう。ケンって本当にいいヤツだよな。」
藤丸が懐くわけが分かるよ、と言う尊に、K・Kは次の所に行こうか、 と倉庫を後にしてその荷物を脇に都庁跡を更に探索するのだった。
家に帰ってきて、泉が用意した夕食を平らげた後、俺はもう寝るからな、と寝室に行った泉を残して 尊は充電が終わって今日拾ったゲームのハードを起動した。
「懐っつかしーなー。昔良くやったよー。」
東京が隕石で孤立する前、高校生だった尊はご多分に漏れず、普通の高校生男子が好きな ゲームに興じる学生だったわけだ。
「これ恋愛シュミレーションかな。」
画面にあなたの性別は?と選択肢が出てきて、おとこ、っと入力する。
ーへぇ、、ときメモみたいなやつかなー
学校の場面が出てきて、伝説のスズカケの木の下で告白をもらえると・・・と画面が進んで行く。
さくさく最初のナレーションを飛ばして行って、本編に入った時に
「ブッ!!!」
と尊は勢いよく吹いてしまったのだった。(笑)
今日は大した成果がなく帰ってきたK・Kだったが、休む前に尊が興味を持った資料を取りあえず見てみようと ファイルを手に取った。
「八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)」
ー聞いた事はないが・・・・・・
ファイルを開き、その1ページ目のお題目に目を通したが、いまいち興味が持てずにゲーム機の方を見る。
ー尊くんはもうやっているのかな?
時間を見たらまだ11時前だったので、画面ぐらい見ておくか、とメディアを入れて起動した。
「これは・・・・(笑)」
くくっと笑って、ファイルを見直し、後ろの方にあるゲームのマニュアルに目を通す。
ーいやー、藤丸怒るだろうな・・・。
尊に連絡を取ろうかと思ったが、時間が遅いので明日でかまわないだろうとゲームの画面に戻る。
ーしかし、、、日本のゲームっていうのは良くできてるな・・・・・・。
苦笑が止まらず、苦笑いしながらもどんどんK・Kは画面を進めて行く。
思わず夜が更けるまで、年甲斐もなくシュミレーションゲームにはまってしまった K・K なのだった。
「おーい、ケン。今日休みだったか?」
昼過ぎに何時もの貨物発着場で見つからなかったので、藤丸は空いた時間にK・Kの自宅に声をかけにきた。
「Ciao、藤丸。今日はオフにしたんだ。」
めずらしいな、と何時ものように家に上がり込んだ藤丸は、居間であぐらをかき 何か集中して小さい画面を見ているK・Kに近づいて来た。
「藤丸、お前犬派か?猫派か?」
「・・・どっちでもないな。」
そうか、とその小さい画面に戻るK・Kに、お前何やってんだ?とそれを覗き込もうとする。
「いやいや。」
とK・Kは覗き込まれないように、藤丸に背を向けた。
「何だよ。」
ともう一度その画面を見ようと藤丸はK・Kの正面に回り込む。
「いや、これはお前見ない方がいいって。」
もう一度背を向けられて、
「ケン、何だよ。18禁か何かなのか?」
まわりに言わなきゃいいだろ、見せろよ、とK・Kの手から携帯ゲーム機をさくっと奪う。
「あっ!藤丸!」
ーまったく・・・ケンがゲームにはまるなんて珍しいな。
と画面を見ると
『今日のデート楽しみにしてたんだぜ。危ないからちゃんとメットかぶれよ。』
と画面から音声が聞こえて来る。
バイクの音と、バックグラウンドミュージックが鳴って、
『今日は楽しかったぜ。お前だから特別にオレのバイクに乗せてやったんだぞ。 他の奴に言うなよ!オレとお前の秘密だぞ!』
と続きの画面に移っていた。
「おい、、、、ケン、これはどーゆー事なんだ?」
画面の笑顔の藤丸と、それとは似ても似つかない、眉間に深くしわが寄ったいつもの藤丸がダブルでK・Kの目の前に現れた。
ーあちゃー、ばれたか・・・・。
とK・Kはせっかくのオフが台無しになりそうな予感がするのだった。
「ハッピーくん、いるー?」
一方赤銅家には珍しく回診ついでに茜が立ち寄って来ていた。
その呼びかけに誰の答えもなく、赤銅家はしん、としている。
「ハッピーくん最近来ないから、白雪(ちび)ちゃんが寂しがってるよー!」
人けが無いように見えたので、仕事かなー、と立ち去ろうとすると、
「あ!茜ちゃん!待った!すんげーいーとこに来た!」
と奥からバタバタバタッと尊が転がり出てきた。
「ハッピーくんまだパジャマー?どしたの?」
玄関まで勢い良く転がってきた尊に、何が起こったのかと茜は尊を見た。
「茜ちゃん、時間ある?もう朝からちょー誰かに話したい事あってさー。」
尊が笑いを抑えきれない様子で、茜の手を引っ張る。
「面白いことー?」
という茜に、うんうん、と答えて、上がって、と尊は自分の部屋にすぐ入れると、
「これ。」
と昨日入手した携帯ゲーム機を茜に差し出した。
その画面に映っているのは、
「あれー?これ髪下ろしたデコちゃんじゃん。」
と茜がびっくりして画面を凝視した。
「そう!、そうなんだよ!しかも性格が全然違うんだよ!」
見てみ、と尊が画面を操作する。
『尊、ケーキ焼いたんだ。一緒に食べる?』
「デコちゃんがケーキ・・・・」
と絶句する茜に、
「ここでYESを選ぶだろ。」
と尊が画面を進める。
『嬉しい!美味しくなるように頑張ったんだ!食べよ!』
と満面の笑みが画面いっぱいに広がる。
「これ、デコちゃんじゃないよ・・・・。」
と茜が至極まともなコメントをする。
「そう!そうなんだよ!でも顔は藤丸なんだよなぁ・・・。」
『おいしかった?』
と画面が進んで、藤丸なのに、藤丸じゃない笑顔のキャラが画面に現れる。
「・・・・・・・・・」
あまりの本人との乖離の激しさに、目を見合わせる茜と尊。
「でもこれやってたらさー、本物に関係なく可愛くなっちゃってさー、」
と画面を進める尊。
「うん、ホント似てるよねー。ってデコちゃんもこんな笑顔できるんじゃないかって思っちゃうよね。」
ぴくん、と尊が茜を見る。
「そう!それだよ!この十何万分の一でも藤丸ができたら絶対これから楽になるって!」
ちょっとオレ藤丸のとこ行って来るー!
と尊がパジャマに上着をひっかけたまま飛び出して行った。
ーでも・・・きっとデコちゃん激怒するよー、そんな事言ったら・・・。
でも面白そうだから僕も行っちゃおー、と次の回診の時間を確認しながら、
茜は尊の行き先を追うのであった。
「で、ケン。これどこにあったんだ?」
K・Kの顔にゲーム機を突きつけ、襟首を締め上げて、藤丸は最近ぱったり見られなかった、 八王子区長時代のオレ様横暴キャラで、K・Kを問いつめていた。
「ま、落ち着け藤丸。な?」
と、K・Kからあらいざらい事情を白状させようとしている藤丸の所に、ちょうど尊が転がり来んできた。
「ふ、、藤丸!オレお前に言いたい事があって!!」
「あん?今オレは急がしーんだよ。後にしろ。」
全速力の割にはパジャマだったので、直ぐ後ろに茜が追いついて来る。
「藤丸!お前は笑ってる方が絶対可愛いって!」
「はぁ!?」
藤丸の眉が更に0.3mm上がり、思わずK・Kを締め上げている手を藤丸は離して、尊に掴み掛かろうとした。
「ほら、これ。」
げほっげほっ、と締め上げられていた襟から解放されて咳き込んだK・Kをよそに、 藤丸は尊から渡されたゲームの画面を見る。
『ケンがOKなら尊、いつでもお前と一緒にいれるのにな。』
画面の藤丸はポニテを解いて少し胸元を緩めた服装で、笑顔で見つめている。
あり得ないストレートな尊への好意のセリフが、自分と同じ顔の口からで出てきたのを聞いて、 藤丸は凍りついた。
そんな藤丸をよそに、尊はK・Kを介抱(?)する。
「尊くん、結局やってみたのか?」
瀕死(笑)のK・Kは自分の後ろで固まっている藤丸をちらっと見て、尊に聞いてみた。
「うん、かなり。でもさぁ。」
と不満そうに尊が言う。
「こう、、、何かボリュームが藤丸には足りないんだよなー。」
尊の答えに思い当たる節があり、くくっとK・Kは苦笑する。
「尊くん、女編やったんだろ。」
「うん、顔は藤丸なんだけど、身体がなんかつるぺたで・・・」
と言う尊にぴくっとリアル藤丸が反応した。
「それはわざとだ。尊くん、この資料を見てみろ。」
とK・Kは脇にあったゲームパッケージとセットのファイルをばさっと開け、ある議事録を尊に指し示した。
「うん?第2回八王子区イメージ向上プロジェクト(区民向け案)推進会議、 出席者 黒雪都知事、中ノ下近衛、ゲーム会社コ○ミ・・・・・・・・」
そこには熱く、今回のゲームコンテンツの目的をを語った上に、 現在区民への評判がいまいちの八王子区長の近親感アップを目指すため、 人物ビジュアルは本人を想起させる方がうんたらかんたら・・・という異次元の会話が書き付けられていた。
「ケン、全部これ読んだのか?」と尊が聞く。
いや、よくは・・・、とK・Kが首を振った時、ぽん、と藤丸はK・Kの肩に手をかけた。
「ケン、オレとお前の間で隠し事はねぇよな?」
切れ気味の表情で、二人の答えを待たずにガサッと藤丸は資料を横取りした。
ーどこのどいつがこんなの作りやがったのか、ぶっ殺す!
頭に血が上って、がさがさと乱暴に資料を繰る藤丸。
と、その時に、ひゅん、と見覚えのあるムチが飛んできて,藤丸の手から資料を奪っていった。
「なっ!だれだ!」
「これは、懐かしい話題が聞こえてきたと思ったら。皆様ごきげんよろしゅう。」
黒雪消滅から完全復活した天城屋の手に、藤丸が持っていた資料が移動していた。
「てめぇ、これについて何か知ってるな?」
すっかりぶち切れた藤丸が天城屋に噛み付く。
「ええ、これは旧都庁の汚点とも言えるプロジェクトでしたが、故黒雪都知事が乗り気でねぇ。。。。」
ちらっと藤丸に視線を流して、天城屋は言葉を続けた。
「まあ、まだ乳臭さの抜けないアンタが一人前みたいに区長なって、そのフォローを私たちがするのはいいんですよ。 ただ、この天城屋が許せないのは!」
天城屋があのゲームの画面をフォン、と映し出す。
そこでは、何かサブイベントで白雪が主人公に助けられたようで、
『ぎーや!ありがとう!大好きなのー!』
と白雪がどアップで映る。
そのすぐ後に、
『ぎーや。オレの白雪を守ってくれてサンキューな。バチ☆』
と画面の藤丸が、
「藤丸がウィンクしてる!」
「ウィンクしてたな。」
「ウィンクしたねー。」
「そうです!!!私の純粋で美しくも可愛らしく気高い白雪様を『オレのもの』呼ばわりは許せなくて、 何度制作側と故黒雪都知事に掛け合った事か・・・・・・」
背景の三人のコメントを丸無視して、苦悩の様子を見せながらはぁ・・・・と眼鏡のブリッジに指を添え、 頭を振ったた天城屋。
ー毛玉さんて、話すとこんなうざいんだー・・・
天城屋語初心者の茜以外は、皆また始まった、と深いため息をついた。
「しかし、このプロジェクトのおかげであたしゃぁ、私の白雪様を自宅までお持ち帰りできる上に、 日夜愛でられてですねぇ・・・まぁ・・・そのぐらいは許せる気になってきたんでございますよ。」
場所はK・Kの自宅の玄関前なのに、白雪様語りに陶酔している天城屋はまるで見えないバックダンサーをしょって 演技している役者のように朗々と語っていた。
「だーかーらー、よーするに全部オレのおかげだったんだろ。」
話の腰をさっくり折る藤丸。
「いえ、本題はここからです!!!!」
ピシっと藤丸の前にまた画面を示す。
『ぎーや、オレ、お前が白雪にいろいろしてくれて、・・・』
画面の中は桜の花びらが舞って、伝説のスズカケの木の下にいる藤丸という設定のようだった。
『最初はオレの白雪に親切にしたいだけだと思ってたんだ。』
ー100%そうだろう!!
その場の全員がその言葉を信じた。
『でも、白雪が絶対違う、自分に優しくしてくれるけど、いっつもオレの事色々聞いてくるからって・・・』
画面の中の藤丸が悩ましげな表情になって、頬を染めた。
それを見てなぜか照れるK・K、尊とあっけにとられる茜。
『だから、そう思ってお前と接してるとだんだん気になってきて・・・。ぎーや、オレの気持ちは迷惑か?』
「アンタのねー、その気持ちは迷惑なんですよ。」
ー藤丸のじゃないだろう。。。。
とのK・Kの突っ込みは当然天城屋には届かなかった。
「どうすれば、白雪様とのエンディングを迎えられるのかと何百回やった事か・・・」
ーゲ、ゲーム的には藤丸のがハッピーエンディングなんじゃないか?
何百回・・・そのしつこさに尊が絶句する。
「でももしかしたらこの資料にあるかもしれませんねー。私と白雪様のハッピーエンディングが」
とすりすりと資料に頬擦りして一人ごつ天城屋に、つかつかと藤丸が近づいてきた。
「天城屋、そりゃー悪かったよな。」
ぐいっと天城屋のゲーム機と資料を持つ手を掴んで、
「ケン、銃。」
と切れ顔のまま左手をK・Kに差し向ける。
「いや、さすがに藤丸それは・・・」
「ふーん、そーかっよっ!!!」
天城屋を両手で掴み、ぐいっと思いっきり引っ張って、自慢の広いおでこを,ガンッ、と藤丸は天城屋の額に打ち付けた。
あまりの不意打ち攻撃にどさっとひっくり返る天城屋。
「安心しろ。金輪際二度と、リアルでも二次元でもお前によろしくはしねーから。」
ひっくり返った天城屋を見下ろして、しっかり天城屋のゲーム機とファイルを取り返した藤丸は、いてー、と額をさすりながら、 くるっとK・Kと尊の所に帰って来る。
そして、バサバサバサッとゲーム機3セットとファイルを尊の目の前に置いた。
「赤銅、燃せ。」
「えー、でもオレまだ全部クリアしてな・・・・」
ガサッとゲーム機を踏みつけて、藤丸はにっこり笑った。
「もう十分だろ。本物の藤丸様が笑っているうちにやれよ。」
「は、、、はい。。。」
グリムロックオリジナルの力をまた下らない仕事に使うはめになった尊。
「あと、それ拾った所に行って全部消し炭にするからな。」
嘘くさかった笑顔は直ぐ消えて、じろりとK・Kと尊を藤丸は睨んだ。
「いや、藤丸でもこれから元都庁に行くと結構遅くなるぞ。今度時間のある時に・・・」
「ふーん、遠ければオレのバイクに特・別・に、乗せて行ってやる。それ燃したら直ぐ行くぞ。」
激怒している藤丸に見えないように、K・Kと尊は苦笑いをして目を見合わせた。
「あっ、そうだ!僕もう回診にいかなきゃ。ハッピーくんじゃ、気をつけてねー。」
と茜が声をかけた。
「ありがとうな!茜ちゃん。」
「おい茜、このこと言いふらすんじゃねぇぞ。」
その場を離れる前に藤丸が釘を刺す。
「りょうかーい。デコちゃんもがんばってねー。」
ナニをだよ!!と噛み付く藤丸にバイバーイと笑いながら手を振る茜。
結局K・Kと尊は今日も旧都庁に通うはめになり、散々なオフ日になったのだった。
「ああ、そのプロジェクトならあの黒女が一番熱心だったな。」
↑の出来事から1週間程たって、公共交通の車両メンテでたまたま一緒になった泉と藤丸は 昔の話を始めたのだった。
「俺たち近衛はどうでも良かったんだが、未来ある有望な若者へのサポートは先達の義務であるとか何だか言って、 予算突っ込んでたからゲーム会社が悪のりしたのかもな。」
「んっとにあのババァ余計な事しかしねぇな!(怒)」
怒りながら、運転席の定期点検項目が全部終わったか藤丸が画面でチェックする。
「たしか区民全員楽しめるように男女選べる方がいいとか、細かい事を・・・」
「げっ!まさか一般に配ってねぇよな!」
藤丸はぎくっとして、泉の方を向いた。
「安心しろ。そうなる前にプロジェクト自体たち消えたはずだ。」
危ねぇ・・と泉の言葉を聞いて安堵のため息をつく。
ーそういえば、あの後中ノ下がまた何か反省していたな・・・。
よし、そっちは終わったか?と泉に聞かれて、完了、と手を振った。
「そーだ。あの能天気に、いい加減二次元のオレを記憶から消せって言っといてくれよ。」
帰宅しながら藤丸が泉に話しかけた。
「?」
「何かある度にゲームでは素直だったとか、まったくケンまで一緒になって、オレに何を求めてるんだか・・・」
モノ本相手にあいつらめ、、と毒づく藤丸に、
「ははっ・・・そりゃ災難だな。」
と泉は答えた。
日は少しずつ西に傾いてきて、きれいな夕焼けの空と、通り沿いにある人家からは夕食の準備と思われる、
美味しそうな料理の臭いがしてくる。
赤銅家に着き、じゃ、と藤丸に挨拶して泉が玄関を開けようとした時に、
「あ!兄キおかえりー!」
と尊が転がり出てきて、ガラッと玄関を開けてきた。
「兄キ!オレ藤丸のゲームの兄キのセーブデータ見つけちゃってさ!」
ーげっ!
一瞬冷や汗が泉の額を流れたが、おかまいなく尊はデータを呼び出す。
「これ!何か藤丸がシャワー浴びた後に、ポニテのゴムが見つからないから一緒に探してってイベント! どうやって出すんだ!?」
「て、てめぇら兄弟そろって・・・・・・(怒)」
「げっ!藤丸!!」
泉の後ろに隠れていた藤丸を見つけて、尊が後ずさる。
ー・・・・・・まずった・・・尊の行動はいつも予想以上だった・・・
と頭を抱える泉をよそに、それ燃せ!今オレの目の前で!と激怒する藤丸が再び現れ、 平和な東京の今日も無事に日が暮れて行くのでした。